冷たい舌

 楽しげに騒ぐ学生たちを見ているうちに、透子は訊いてみたくなった。

「ねえ、忠尚。なんで他所の大学に行かなかったの?」

 んー? と忠尚は惚けたような声を出す。

「私、忠尚は真っ先に都会に行くと思ってたよ」

 忠尚は頬杖をついて、さっき透子がしてたように、店内を見ながら呟いた。

「でも、俺、この八坂好きだしな」

 それは忠尚の口から出るにしては意外な言葉だったが、ちゃんと嘘偽りのない言葉として、優しく響いた。

「お前も和尚も此処に残るっていうしさ。
 お前らこそ、もっといい大学にも行けたろうに」

 透子は淡く笑う。

「だって、私は此処を離れるつもりないもの。
 第一、私が居なくなったら、誰が龍神様のお世話をするのよ」

「それくらいジジイがするさ。ほっといても大丈夫だよ。
 龍神は寝たきり老人じゃないんだから」

 忠尚らしいその言葉に、透子は笑った。