冷たい舌

 怒ったように皿を突くと、
「はいはい、お姫様。
 でも自分でやんないといつまで経っても、うまくなんないぞ」

 そう文句を言いながらも、素直に切り分けてくれる。

 その意外に器用な手先を見ながら思う。

 こういうとこが和尚と違うんだよな。

 和尚だったら、此処でもっと痛烈な一言が来る。

 まあ、結局やってくれるのは一緒だけど。

 人にやらせておいて、モスコミュールの入ったグラスに口をつけた透子に、顔を上げずに忠尚が釘を刺す。

「飲みすぎんなよ。お前、笑い出して止まらなくなるからな」

 いつか旅行行ったとき往生した、と溜息混じりに言う。

「あれ、まだ飲めたのに」

 未練がましく透子は呟いた。

 去年の冬、二家族の有志で旅行に行った。

 宿泊先の鳥取大山(だいせん)のホテルで、カクテルのバイキングがあったのだ。

 かなりいける口の透子だが、流石に許容量を越えたらしく、笑いが止まらなくなった。

 まだ飲めるのに~、と笑いながら泣く透子を、和尚と忠尚が引きずって部屋に帰ったのだった。

「……あれはびっくりしたわ。
 私も酔うってことを、初めて知ったわ」