冷たい舌

 


 忠尚は静かなショットバーとかが好きなのだが。

 まあ、たぶん、女の子を口説くのに都合がいいからだろう。

 今日はそんな気分じゃないからと、透子の提案で、学生時代からよく通っていた小洒落た居酒屋に足を運んでいた。

 此処は和尚たちの居る店にも近い。

 しかし、好物の特製ポパイオムレツなどが並んでも、透子は浮かない顔をしていた。

「なんだよ、食わねえのかよ」
「……食べるけど」

「元気ねえな。ほら」
と大盛りのスパゲティを取ってお皿に入れてくれる。

「そんなに要らないって」

「もしかして、和尚が気になるとか言わねえよな」

「そういうんじゃないけどさ」
と溜息をつく透子に、じゃあ、なんだよ、と胡散腐そうな目を向ける。

「色々考えちゃって」

 そこで、透子は暗くなりそうな話題を避けて、微笑んだ。

「いいから、食べよ」

 せっかく、こうして久しぶりに二人で出て来たんだから、透子としても楽しくやりたいところだった。

 取り合えず、オムレツを切り分けていた透子は、忠尚の視線を感じて顔を上げた。

「なに?」
「いや、相っ変わらず不器用だなあと思って」

「すっごい! 余計なお世話!
 じゃあ、忠尚やってよっ」