冷たい舌

『透子、俺たちも今日、飲みに行かねえか。

 で、気が向いたら覗いて見ようぜ。あの和尚が、どんな顔でコンパに出てんのか』

 それは面白すぎる提案だったが、透子はつい溜息を漏らしていた。

『なんだよ、乗り気じゃないのかよ』

「ううん……行こうかな」

 それじゃ、と電話を切った透子に、公人が訊いた。

「誰じゃ?」

「忠尚。
 飲みに行かないかって」

「和尚はどうしたんじゃ」
「和尚は、コンパ」

 口に出しても、うわっ、似合わないっと思ってしまう。

「コンパー?」
と公人もまた眉をひそめる。

「斉上さんに引きずってかれたの」

 斉上、と公人は口の中で呟き眉を寄せると、
「おお。
 あの、お前に惚れとる男か」
と手を打つ。

「はあ?
 斉上さんだよ?」

「お前らの先輩で、ときどき此処にも来とる、あの男前じゃろうが。

 ほんに、お前は鈍いのう」
と小馬鹿にしたように言う。

「そんなことじゃから。あの春日とかいう男が会いたいと言ってきても、ほいほい付いてくんじゃろうな。

 だいたい、お前は― こりゃ、透子。
 人の話は最後まで聞け」

 斉上さんが私を好きだなんて言う、ボケ老人の話に付き合ってられるか。