冷たい舌

 和尚。
 私ね、あのとき― 本当にどうでもよかったの。

 淵の底で、人でないものに戻ったとき。

 貴方のこと― 本当にどうでもよかったの。

「透子……?」

 透子は目の前の男を見つめ、軽く微笑んで見せた。

「帰ろっか」

 そっと手を差し出すと、彼はまだ何か言いたそうに迷っていたが、ちゃんと手を重ねてくる。

 確かな人としてのぬくもりが、人である自分に伝わった。

 どうか、一分でも、一秒でも長く―

 この人を愛していられますように。