冷たい舌



 
 透子の横で、彼らを見送るために、林の方を見ていた和尚は茫然とした口調で呟いた。

「透子」
「はい」

「今、ババアの言ったこと、ほんとか?」

「……そうね。私、この封印で助かったわけだから、これもまた、新しい身体にも根付くでしょうね」

 和尚の、龍神の生贄になるために、清く身体を保ち、和尚を好きな気持ちを封じ込めるこの封印。

「お前それじゃ、神に戻って俺を忘れるのと、なんの違いがあるんだ?」

 そう不満げに言う和尚を見上げ、透子は小さく笑ってみせた。

「……全然違うわ」

 そうか? と彼は首を捻っている。

 そう、全然違うの。
 貴方にはわからない。

 一度、封印で封じ込めても、人間の私は、もう一度貴方を好きになるかもしれない。

 でも―

 透子はざわめく黒い淵を振り返る。