冷たい舌

「これが願掛けの真相。

 でも、実際のところ、この取引には裏があった。

 たぶん、あのときのお祖母ちゃんには、あまり前世の記憶はなかったろうけど、無意識のうちに、前世の思惑を叶えようとした。

 私を利用して、龍神をうまく扱える巫女を作るってことね。

 だから、お祖母ちゃんが私に全財産くれたのは懺悔。

 そういう取引のふりして、私をだまくらかして龍神の巫女の身体にぶち込んだから」

 透子は、いつの間にか手許の砂地に落ちていた懐剣に気づき、それに手を触れる。

「八坂の剣―

 そうか、魂はともかく、身体が復活したのは何故かと思ったら、これのせいね」

「え?」

「あの剣、引き抜いたとき、十年前のまま、龍神の血が滴っていた。

 私は流れ出る血でこの淵を清めたけど、その代わり、剣から龍神の血が入った。

 その……今日は満月だから、私、また、狂いなく月のものが来たのよ」

 少し赤くなって川面に揺れる月を指差す。