冷たい舌

 その瞬間、腕の中の透子がびくり、と震えた。

 きゃっ、と目の前に居た透子の姿が、小さな叫びを残して消える。

 な、なんだ!?
 『透子』が、微かに身じろぎをしたように感じた。

 よく見ると、その頬に赤みが戻っており、睫が微かに震えている。

「と……透子?」

 ゆっくりと瞼が開き、透子のあの愛らしい黒い瞳が開かれた。

 嬉しいよりも何よりも、茫然とその変化を見守る。

 なんでだ? こいつ、確かに死んでいたはずなのに。

「透子?」
「いったーっ!」

 呼んだ声さえ掻き消すように、甲高い声がした。

 見ると、死んでいたはずの透子が後頭部を抑え、起き上がっている。

「やだっ、なにっ!? 此処何処っ。水の中っ!?
 なんで私しゃべれてんのっ。てか、なんで生きてんのっ!?」

 お前……と和尚は、どれほどそれを望んだかも忘れて、生き返った透子の騒々しさに、砂地に両手をつき、項垂れた。