冷たい舌

 なんとなくムカつきながら、おい、ババアと呼びかけた。

「この女、もう一度この器に押し込められないか」
 そう言うと、透子は目をしばたく。

 薫子が、袖で口許を隠し、にやりと嗤った。

「心配するな、和尚。なんのために今日、儀式を行わせたと思っておる」

 透子が、ん? という顔をする。

 はっ、と自分の遺体を見た。

「……そうか、薫子! 謀(はか)ったな!

 お前だろう。私にあの紅い月の夢を見せていたのは!」

 なんのことだかわからないままの和尚の前で、薫子は微笑んで言った。

「せっかく手に入れた龍神の巫女を、そう簡単に手放すわけには行きませんからな、姫神様。

 それに― これは、可愛い孫の『透子』の望みでもあるのですから」

 つまり、本当は貴方の望みでもあるのですよ、と言い終わる前に、逃げるように薫子の姿は掻き消えていた。