冷たい舌

「お前か……」

 龍を退治し、腹から剣を取り出したのはこの女だったのか。

「それからはお前が此処を治めていたのか?」

 いやあ、という透子に、薫子は、
「これがそんな殊勝なものなら、人間の私がわざわざ大陸から渡ってきたりはせんわ。

 この女、龍がおとなしくなったのをいいことに、また、すべてを任せて、のらりくらりと」
と愚痴を垂れる。

「お前……神様でも人間でも性格変わんねえじゃねえか」

 やはり、透子と、この女との間に、明確な線引きなどないような気がするのだが。

「和尚。その女はお前との約束を果たすため、人になろうとしていた。

 だが、人でないものが人の器に宿るのには人の許可が居る―

 私は龍神を抑え、うまく使うために優秀な巫女が必要だった。

 利害が一致し、私は孫として、透子が生まれてくることを許す代わりに、龍神の巫女の器を与えたのだ。

 どうかと思ったが、透子、人として生まれてきたお前は、ちゃんと私の可愛い孫だったよ」

 ありがとう、と透子は上から微笑む。
 あくまでも、上からだが。