冷たい舌

 和尚は唇を噛み締め、そのいつも以上に倣岸不遜に見えるその顔を見上げる。

 川面から降りそそぐ月光が、川の流れに揺れ、女に天女の羽衣を纏わせているように見えた。

 相変わらず美しく微笑んでいるその顔は、透子そっくりの造形だったが、やはり何かが違っていた。

 もう自分への情愛も何もかも捨て去ったような透徹とした瞳をしている。

「透子……」

 神凪透子という身体が死んだときよりも、絶望に満ちた声で呼びかける。

 身体が離れるのと、魂が自分から離れていくのとでは違う。

 死んでもなお、『透子』は自分を想っていてくれると信じていたかった。

 この透子は俺を愛してはいない。

 いや、もともとそうだったんだ。

 あの『透子』こそが、この女の作り出した幻だったのだから。

 幻―

 和尚はその言葉を噛み締める。

『和尚ーっ!』

 いつも甘ったれた声で自分の名を呼び、石段を駆け上ってきていたあの透子が幻?

 みんなに罵られながら、カウンタックをぶっ飛ばしていた透子が―