冷たい舌

 言葉もなく見守る人々の耳を、すべてが終わった後の静けさが打つ。

 和尚は黙って淵を見つめていた。

 その静寂を破ったのは加奈子だった。

「……めんなさい。ごめんなさい、ごめんなさいっ!」

 まるで白龍の輝きに当てられたように、加奈子は顔を覆って泣き始める。

 加奈子の口から吐き出される謝罪の言葉は和尚の耳を素通りとして行った。

 彼の脳裏には今見た、透子の化身としか思えない端麗な龍の姿が焼きついていた。

 気づいたら、袴を澄んだ淵の水が濡らしていた。

「和尚っ!」
「和尚くんっ!」

 和尚はすっかり元に戻って、白く清廉な光を放ち始めた月を見ながら、淵に足を進めていった。

 ああ……奇麗な月だな、透子。

 ずっとお前と見ていたかったよ。

 そして、あの幻影みたいに、この淵の黄昏で、お前を見てみたかった。

『お前が望むなら、ずっとお前の側に居てやるよ』

「……この嘘つきが」

 真っ白なクレーターさえ見えそうな大きな月が、黒い林の上に浮かんでいた。

 忠尚たちの声は、耳に押し寄せる水に飲み込まれ、やがて、消えていった。