冷たい舌

 

 
 昔のような静寂を取り戻したほとりでは、天満が咳き込む加奈子の背を撫でていた。

 和尚は、ほとりに上がり、力を剥ぎ取られ蹲る加奈子を見下ろした。

「和尚くんっ!」

 和尚が何をしようとしているのか気づいた春日が、加奈子を庇って前に出る。

 感情の籠らない目で、和尚はそれを見た。

「退け、春日」

「駄目だ! 和尚くん!」

「何故だ? そいつが透子を殺したんだ。
 そいつさえ、余計な手出しをしなければ、今、死ぬことはなかった!」

 一分でも、一秒でも、長く生きていて欲しかったのに……っ!

「和尚くん……」

 春日は、それでも加奈子を庇い、首を振る。

「駄目だ。君は透子さんが命を捨ててまで取り戻させてくれた力で、人を殺めるつもりか!

 神の力で人を殺せば、君は本当に人ではなくなってしまうぞ!」

 だが、和尚は嗤っていた。