冷たい舌

 透子の身体が沈んだところに、そっと手を伸ばす。

 自分が手を入れたところから、金色の波紋が起こり、透子の血で赤く染まっていた淵を染め変えた。

 ざんっと重い音がした。

 身体を支え切れなくなった加奈子が上流に落下したらしい。

「忠尚、なにやってるんだ、忠尚! 早く加奈子さんを助けろ!」

 天満の声がする。

 だが、動かない忠尚に代わって、天満が再び川に飛び込んだ。

 ざばざばと水を掻き分ける音がする

 淵は昔の輝きを取り戻している。
 だが、和尚は笑った。

 これがなんだというんだ。八坂が守れたから、どうだっていうんだ!?

 俺はお前が、この八坂を、淵を龍神を愛していたから、守りたかっただけだ!

 ……それだけだったのに!

 ちょっと高くてあまったれた透子の声が、耳に蘇る。

 かずひさーっ

 なんで気づいてやれなかった、俺は……。

 いつも、いつもいつもいつも、あの笑顔の下で、あいつは、いつか訪れるこの瞬間に脅えていたのにっ。

 俺は、またあいつと居られる幸福に酔って、すべてに目を閉ざしていた。

 見えていたのに。

 すぐそこに終わりがあること―!