冷たい舌

 俺の生贄になること。

 それがお前の望みなのか?

 それだけが、もうお前にしてやれることのすべてなのかっ?

 和尚はそっと、腕の中の透子を淵の水に触れさせる。

 透子の身体が吸い込まれるように淵に呑み込まれた刹那、金色の光が触手を放つように自分に襲いかかってきた。

 側にいた春日があおりをくらってよろける。

 龍神を殺したとき、この光が自分に向かってきた。

 自分を次の龍神にするために。

 あのとき、身体に入り切らなかった光が、今、すべて魂の奥深くに吸い込まれていった。

 一瞬の内に、淵を取り巻く空気が変わったのを感じる。

 かつてと同じ、息をするのも苦しいほどの澄み渡った神聖な空気。

 和尚は自分の身体が、白く、闇から浮き上がるように燐光を放っているのに気がついた。

 ぼんやりとそんな自分の手を見つめる。

 龍神になって初めて、不思議なまでに研ぎ澄まされた感覚を覚えた。

 この八坂の空気に触れるすべてのものが自分の支配下にあるような。

 だが、それがなんだと言うんだ?

 人間、神凪透子は消えてしまった。

 この天女を手放さないで済むものならば、俺はなんでもすると誓ったのに。