冷たい舌

「お前っ、ほんとに俺になんにも言ってねえよっ。
 いつだって、俺ばっかりっ」

 悔しくて悔しくて。
 なんとか自分だけを見つめさせたかった。

 その目で、俺だけを見て、愛していると言って欲しかった。

「お前のために、俺はなにもかも振り捨てて来たのに。
 なんで……最期までその願いを叶えてくれない?」

 ふっと、かつての透子の姿が思い浮かんだ。

『いいだろう。お前が望むなら、私はお前の側に居よう』

 ……お前が望むならかよ。

「―ほんっとーに、ひどい女だ」

 苦笑する。

 俺はあのときも、お前が神凪和尚として産まれてからも、ずっと、そう言いたかったんだよ― 透子。

「このくそ女……っ」

 俯き、吐き捨てる和尚の肩に誰かの手が触れた。
 人の温かみ、だが、和尚は振り向かなかった

「……沈めてあげてください」
 静かに春日はそう言った。

「彼女はいつでも逃げ出せたのに、君のために逃げなかった」

 ふいに透子の言葉が蘇った。

『貴方が苦しむ姿、ずっと見てた。つらかったあ……』