冷たい舌

「和尚くんが龍神? どうして―」
 すぐ側で春日の声が聞こえた。

 彼もまた赤い水の反射する光に染まり立っていた。

 固まっている和尚の代わりに、透子は喘ぐように言葉を出した。

「神殺しの罪― それは……人の身で神の力を負うことに他ならない」

 あのとき、透子は見ていた。

 龍神の、裂けた逆鱗から溢れ出した力が、和尚に向かって雪崩れ込むのを。

 あのとき自分たちがしたことは、図らずも龍神交代の儀式となったのだ。

 古い神を殺し、新しい神を作り出す―

 人々の信仰が薄れ、力をなくしつつあった龍神を、一度死なせ、和尚の中に、その力を生まれ変わらせた。

 あやふやに分散していた力をこの器の中に集結させ形作るために。

 だが、強い霊力を宿すこの淵を、和尚は制御しきれなかった。

 人の器に収まり切れない力。
 苛立つ彼を、ただ見ているしかなかった。

「貴方が苦しむ姿、ずっと見てた。つらかったあ……」

 透子っ、と和尚が言葉を詰まらせる。
 笑いかけてあげたかったのだが、それも今はもう難しい。

 何処が痛いのかもよくわからないほど、全身がだるかった。

 もう血液の半分も残ってないのではないかという気がした。

 傷口から血が流れ続けているのを感じる。

 それは、龍神に与えられる力となって、淵に注がれ続けている。