冷たい舌

 静かだ。何もかも嘘みたいに―

 八坂の剣を月に掲げる。

 紅い月に鈍く光る白銀の剣。

 龍神の血の滴るそれに、透子の手は震えた。

 怖い。

 本当は声をあげて泣き出してしまいたい。

 蹲って叫び出してしまいたい。

 だけど、そうすることで誰が救われる?

 いったい、誰が……っ。

「透子っ!?」

 和尚の声が聞こえた。

 透子の不審な行動に気づいた彼が振り返る。

 透子は驚いたようなその顔を目に焼きつけようとした。

「お前! なにをっ!」

 振り返った和尚の揺れる髪に、一瞬、あの黄昏の幻想が重なった。