冷たい舌

 透子は春日の顔を両手で掴み、その額に己れの額をぶつける。

 感謝の念をじかに届けたい気持ちの表れだった。

 眼を閉じ、祈るように言う。

「ありがとう。もう少し長く生きていられたら、きっと貴方とはいいお友達になれた」

「透子さん……っ」

 眼を開けたとき、間近に見えた春日の顔は泣きそうに見えた。

 ひとつ息を吐き、透子は歩き出す。

「透子さん! 今からでも遅くありません。考え直してください。

 だいたい、そんなことして、もし、龍神が復活したらどうするんです!?

 今、淵を支えている和尚くんの負担は軽くなるかもしれませんが、それは、貴女を失ってまで、彼が手に入れたいものではないはずだっ。

 それに、龍神は再び彼を殺そうとするかもしれないじゃないですかっ。

 透子さんっ、待ってください。透子さんっ!」

 春日の声を背に聞きながら、透子は淵へと歩いていった。

 かつて和尚の背から見た白い星が、今も赤く霞む西の空に微かに光っているのが見えた。