冷たい舌

「どうして……」
 そう呟く春日の声は震え、闇に儚く消えていった。

「だって、龍神は和尚を殺そうとしたんだもの。
 潔斎中に私に触れた。ただそれだけの罪で。

 だから、私は私の神を殺した」

 まるで自明の理であるかのように透子は言い切る。

「透子さん……」

「私、最後に貴方に会えてよかったです。こうして、ちゃんと話を聞いて、理解してくれる人がいることで、私は救われた」

「待ってください。なら何故、今、その龍神に力を与えるようなことを―!」

 透子は、春日の額を軽く指先で突いた。

「と……!」

 自分の体に起こった変化を理解できないように、春日は言葉を止める。

 声を発する器官以外、指先一本、動かせないはずだ。

「私が力を与えたいのは、龍神ではなく。
 その力が宿るこの淵そのもの―

 ……ごめんなさい、春日さん。

 私の全てが終わって何が起こるか。
 貴方が見届けて―

 そのために貴方と出会ったのかもしれないとすら思うから」