冷たい舌

 和尚は袖から出した念珠のひとつを、忠尚に投げてやった。

 それをパシッと受け取って、忠尚は叫び返した。

「悪かったって、反省してるっ。もうしませんっ」
「本当かっ!?」

 物凄く不審げに和尚は叫びながら、忠尚の側に行った。

 座り込んだままの透子は呟く。

「反省してる、は本当だろうけど。もうしません、は嘘だろうな」

 幼なじみとしての率直な意見だった。

「春日っ! 透子についててくれっ」

 ほとりで、忠尚とは別に、加奈子の飛ばす邪念を止めていた和尚が、振り返って叫ぶ。

 いつの間にか、透子の側に春日が立っていた。

 透子が視線を向けると、春日は何処かやるせないような目で透子を見下ろす。

 ―聡い男だ。

 初めて見たときから、そう思っていた。

「僕、今日、此処へ来たら、訊きたいことがあったんです」

 春日はこの場に相応しくない、静かな口調で切り出した。

「透子さん。僕、貴女の論文を捜して読みました。

 みな、龍の生贄に関するものばかりだ。どうしてですか?」

 月の下で、透子は小さく嗤った。

「……失敗しないように」