冷たい舌

 まずい……っ。そうだ、今日は満月!

 思わず地面に爪を立てた透子の胸に、恐怖が込み上げる。

 今までの恐怖とはまた違う恐怖。
 失敗したらどうしよう……!

 あの日履いていたのと同じ緋袴を握り締める。

 月経の血が不浄であるというのは、本来、神道の考えではない。

 古代の日本では、むしろ、新しい生命を産み出すものとして、勝利をもたらすものと信じられていた。

 だけど、あの龍神は……。
 いいえ、迷っている暇はない。

 忠尚は加奈子を押えつけようとするが、その度に見事に交わされていた。

 気づいたら、加奈子は、紅い霧の蔓延する淵の上に浮いていた。

 忠尚はそれを睨みつけ、舌打ちする。
「なんでこんな厄介なことに……!」

 邪霊たちの放つ生温かい風に、汗をかいた忠尚は額を拭う。

 その呟きを聞いた和尚は、後ろから怒鳴りつけた。

「なんでだって!? お前の女癖の悪さが原因だろうがっ!」