冷たい舌

 ぼんやりと透子は、それを見ていた。

 加奈子の想いが、こんな現象を引き起こすなんて。

 たかが人間の加奈子が邪霊を操り、この龍穴を汚していく。

 そんなにも、忠尚が好きなのか―

 透子は何か尊いものでも見るように、その紅い月を見つめていた。

「ぽけっとすんな! 透子!」

 和尚が、ぐいっと透子の襟首を引いて、自分の後ろに転がした。

 和尚たちには聞こえないのだろうか。加奈子の叫びが。

 透子の胸には、それが彼女の放つ力よりも鋭い破片となって突き刺さる。

 忠尚さんが好き

 忠尚さんが好き

 誰にも……誰にも渡さない!

「透子っ!」

 加奈子さん、あんな馬鹿な幼なじみだけど、ちっとも女の子を大事にしない奴だけど。

 それでも―

 忠尚を愛してくれてありがとう。

 くれないの月が透子を照らす。

 夜風が白い袖を舞いあげたとき、下腹部に鈍痛を感じた。

 身体から何かが抜けていく感じがした。