冷たい舌

 鋭い叱責の声に、びくっと透子が身体を震わせた。

 彼女が集中力を失うのに合わせ、何故か制御を失った龍が、その巨体を空中でくねらせ、真っ逆様に淵に落下する。

 ザンッと激しい飛沫が辺りに飛び散り、腐った水が透子たちを濡らした。

 きゃっ、と身を引いた透子は、自分の身体を見つめ、いつものように情けなげな声を上げる。

「やーん。びしょびしょっ」

「透子っ!」
 走ってきた和尚が、殴りかかりそうな勢いで、透子の腕を掴んだ。

 透子は思わず目を閉じたが、和尚は透子が無事なことを確かめるようにその身体に触れ、息をついた。

「……無茶をするな」

 透子は月明かりの下の和尚を見つめていた。

「なんでこんなことをする」

 もう聞きおさめかと思っていた和尚の声に、一瞬、詰まりながらも、いつも通りに口をきいた。

「いや、そのっ、加奈子さんが見たら怖がって、やめてくれるかな、と思って」

 ごめんなさい、と素直に頭を下げたとき、後ろから春日の声がした。

「今のが、八坂の龍神?」

 まるで残像を追うように、天を見上げて言う。

 生温かい風に、その背広の裾も巻き上がっていた。

 違う、と和尚は溜息をついて、透子の頭をごつりと小突く。

「あれは透子が作り出した幻影だ」

 春日とともに、遅れて来た忠尚も、ぎょっとした顔をする。