冷たい舌

 そこを退いて、と、ふいと顎をしゃくるように言う。

「厭よ」

 ねえ、透子さん、と嗤いながら加奈子は厭な声を上げた。

「私、こいつらから力を貰って気づいたの。この淵に、龍神なんて居ないじゃない」

 加奈子は淵を前に勝ち誇る。

「とんだ巫女神様ね。居もしない龍神を祀り上げて、みんなに敬われて」

 透子は、その言葉を受け止めるように、目を閉じたが、すぐに瞳を顕わにして言った。

「そこを退いて」

 加奈子が、すっと手を挙げる。
 そこに赤い霧のようなものが宿った。

「止めてみなさいよ! その神の力で!
 出来るものならね!」

 嘲るように叫ぶ加奈子は、澱んだ淵にとどめを刺そうと、その手を薙ぐ。

 透子は彼女に肩からぶつかっていった。