冷たい舌

 

 
 透子がテントを出て裏に回ると、大きな木の側に青い麻のシャツを着た大柄な男が居た。

「天満さん……」

 表の照明と月だけが照らす薄暗がりの中、天満は申し訳なさそうに透子を見ていた。

 透子自身、彼にどう接していいのかわからず、黙って彼を見つめていた。

 ごめんね、と小さな声で彼は言う。

 天満が嗾けさえしなければ、最後まで、三人仲良くいられたかもしれない。
 そう思いはしたが。

 透子は、息をついて、天満の上の梢を見つめた。

 もう……誰を恨むのもよそう。

 近づくと、天満は、びくりとして透子を見下ろす。

 透子は少し迷って、こう言った。

「ありがとう、和尚に言わないでいてくれて。
 天満さん、気づいてたんでしょう?」

 だから、あんなことをしたのだと、透子にはわかっていた。

「行くんだ? 透子ちゃん」

「もし、昨日のこと、悪いと思ってるなら、止めないでね」

 彼の横を通り過ぎようとした透子だが、やはり、これだけは告げておくべきだろうと思い直し、足を止めた。

「あのね、天満さん。

 あのとき、本当はお祖母ちゃん、お薬飲んでなかったんだって―」

「え?」