冷たい舌

 
 
 和尚が仮設テントで衣装を脱ごうとしたとき、
「あー、疲れちゃった」
と座っていた透子がそのままの格好で、向かいのパイプ椅子に、どっかと足を伸ばして、公人に叱られていた。

「透子! 若い娘がみっともない!」

「だあって、緊張しちゃって。身体、ガチガチなんだもん」

 春日が素直に感心したように言う。

「いや、でも凄かったです。

 僕、透子さん一人のときの舞を知りませんけど、これからお二人で舞われたらどうですか」

「今年は特例だよ」
 素っ気なく和尚は言った。

 透子の脱いだ上衣を衣桁にかけていた公人が訊く。

「それより、忠尚はどうしたんじゃ?」

「知るか。あんな奴! また、どっかの女と、ほろほろしてるんだろ」

 公人は自分の側のテントの白い幕を指さして言った。

「いや、なんで此処に居るのに、入って来んのじゃと聞いとるんじゃ」

「なに?」
「忠尚!?」

 知っていたらしい春日は肩をすくめて見せた。

 透子は立ち上がり、公人の側に行くと、着物が汚れるのも構わずしゃがみ込んで、テントの裾を捲った。

 僅かな隙間から外に顔を出す。

「……透子」
 掠れてはいるが、聞き慣れた声がした。

 むっと和尚はそちらを見る。