冷たい舌

 あのころの自分は、部活や遊びに夢中で、そういう世界からまるきり遠ざかっていたから。

 イニシエの因習に縛られるこの町で、自分は外の世界に踏み出したが、和尚も透子も逃れること叶わずに留まっていたように見えた。

 だが、今ならわかる。

 それは、彼らが自ら望んでしたことだったのだ。

 そして、それが和尚と自分との間に、決定的な差をもたらした。

 忠尚はつい己れの手を見つめていた。

 だが、何を後悔しても、もう遅い―

 そんな気がしていた。

 横で春日が、まるで相哀れむように自分を見つめていた。