冷たい舌

「どうして?」
と言いながら、和尚は脱ぎ捨てられた透子の服を避けながら、自分は装束のまま、冷たい水に足先をつける。

「忠尚に汚されたわけじゃないだろう?」
 そう言うと、透子は笑った。

「どうして知ってるの?」

 透子はどちらの意味で訊いているのだろう。

 どうして、忠尚がしようとしたことを知っているのか。

 どうして、忠尚に汚されていないと知っているのか。

 いや― どっちでもいいか。

 安堵の溜息を、透子に気づかれないように漏らしたあとで、彼女の額の中心を指で突く。

「天満さんに聞いた」

 ぴりり、と指先に突き刺すような刺激が走ったが、和尚は笑った。

「封印は健在だな」

 和尚は封印が透子の感情を封じ込めていることには気づいていなかったが、その身を守るのに役立っていることは知っていた。

 何度も自分が弾かれているからだ。

 透子はそのことに関しては、都合よく記憶を消去しているようだが、彼女は何度か自分の部屋を訪れている。

 この間のように、いつも何かに追い詰められているかのような顔をして―

 そう、と言い、透子は和尚に背を向ける。

 その目は流れる淵を見つめていた。

 和尚は黙って、その身体を後ろから抱きしめる。

 細いのに、やわらかな身体の感触が直に伝わってきた。

 初めてちゃんと彼女に触れた気がした。