冷たい舌

 思い切り不満そうに言う龍也に、和尚は抑えた声で訊いた。

「おいっ、透子は何処だ!?」
「あ? 居ないのか?」

 龍也はそこでようやく、姉の部屋を見回す。

「あの馬鹿。潔斎中なのに、いっぱい引っかけやがって」

 その声に、龍也の視線の先を追った和尚は、蓋の開いた金色の缶が転がっているのに気がついた。

 近づいてそれを拾う。

 中身はほとんど残っていなかった。
 絨毯は濡れていないから、零れたわけではないだろう。

 遅かったか……!

 天満から菊水の缶に薬を仕込んでいたことを聞かされていた和尚は、それを握り潰す。

 その耳障りな金属音に龍也は目をしばたいた。

「おい、どうかしたのか。和尚。透子は……」

 言いかける龍也の言葉を塞ぐように、和尚は腕を掴み、壁に押しつけた。

「お前、なんにも気配とか感じなかったのか。何かおかしな―」

「いや……別に」

 そこで、和尚は気がついた。
 ドアのところ、呪法がかけてある。

 外とこの空間とを隔絶する呪法。
 長く持つようなものではなかったが。

 ―この程度の術というと、やはり忠尚!