冷たい舌

 今の和尚には透子の身に何が起こっていても、わかりはしないだろう。

 天満は急に和尚が哀れになってきた。

 自分の犯した罪に和尚はずっと苦しんできた。
 それも愛する透子に口づけた。ただ、それだけで―

 しかも、当の透子は和尚を拒絶し続けている。

 そうだ。和尚は、安穏と薫子に愛されていた公人とは違う。

 そんな当たり前のこと……わかっていた筈なのに。

 天満は爪が食い込むほど、その拳を握りしめた。

 魔が差したなんて言葉で片付けられるようなことではないのはわかっていたのにっ。

 自分は、あの眼に当てられていたのかもしれない。

 薫子と瓜二つの― 決して意思を翻さない、惹かれて止まないあの瞳に。

「和尚っ、すまんっ!」

「……天満さん?」

 不思議そうに和尚が自分の名を呼んだ。