冷たい舌

「なんだ……和尚か。どうした」

 震える声でそう訊きながら、心臓は早鐘のように鳴っていた。

 和尚の自分を見る目はいつもと変わりない。

 まだ、こいつは何も知らない……。

 安堵とも落胆ともつかない感情の中で、天満は和尚を見上げた。

 和尚はそんな天満の思惑になど気づかずに、息を切らして天満に呼びかける。

「淵の様子がおかしいんだ! 俺は呪法を使いすぎて、よく見えない。

 爺はもうあまり、そっちの力は使えないし。

 できたら……あんた、一緒に来てくれないか。頼むっ!」

 天満は和尚が人に頭を下げるのを初めて見た。

 あの薫子にもさんざ逆らっていた和尚が―

 それほどに淵は切迫しているのだろう。

 頭を上げた和尚は真摯な眼で、天満を見つめる。

「あのときも迷惑をかけたのに、あんたに礼も言わなくて……悪かったと思ってる。

 ……思い、出したくなかったんだ」

 和尚は俯き、唇を噛み締める。

「頼む! もう俺じゃ押さえ切れないんだ」

 自分の肩を掴んだ和尚の手が、冷たかった。

 力を使い切ったのだろう。