冷たい舌

 

 
 天満はシャッターの閉まった店内に一人、座っていた。

 もう何時間そうしていたことだろう。
 明かりをつけることさえ、忘れていた。

 手は幾度も、カウンターの側のピンクの公衆電話に伸びかけては止まっていた。

 自分のしてることが、間違っているのはわかっている。

 透子を助けるためだなんて、言い訳だ。

 自分は、あの三人を使って、復讐を果たそうとしているだけだ。

 さあ、この手を伸ばして、受話器を掴むんだ。

 忠尚の携帯にかけて、あいつを止めるか、龍造寺に電話して和尚を呼ぶか、或いは、公人さんに―

 最後の名前に、唇を噛み締める。

 そのとき、遠慮がちに裏口を叩く音がした。

 はっ、と天満は顔を上げる。

 忠尚か?
 慌てて駆け寄り、ドアを開けた。

 だが、そこに立つ男の顔を見て、天満は凍りついた。

 和尚だった。

 いつもと違う白い衣と浅葱の袴が、とても清廉なものに見えた。

 それは真っ直ぐに、天満の心を射る。