冷たい舌

 忠尚の片手が離れた。
 そっと透子の頬に触れる。

「後で……幾らでも俺を恨んでいいから」

 俯き囁く『和尚』の声に、なんだか透子は胸苦しくなった。

 和尚が泣いている気がしたからだ。

 あの日の淵が思い浮かぶ―

 龍神を殺したあと、和尚は何も言わずに、ただ淵に立ち尽くしていた。

 どれほど、その背中を抱きしめて、癒してあげたかったことか。

 もう覚悟を決めていた自分がそれをすることは叶わなかったけれど。

 そのときの和尚が今、此処に居るような気がした。

 自分が一番抱き締めたかった和尚が―

 ねえ―

 此処に居るのは、和尚? 忠尚?

 ……和尚、なの?

 透子の瞳は惑ったまま、男の眼から滴るものを見た。

 そっと手を伸ばし、その目許を拭ってやる。

 どっちでもいい―

「もう……泣かないで」

 男は目を見開いた。