冷たい舌

 顔を見上げた透子は息を呑む。

 そこにあったのは、和尚の顔だった。
 他人が見たら、同じかもしれない。

 だが、透子から見れば、二人はまったく似ていない―

 ……はずだった。

「か、和尚? なんで?
 さっきまで、忠尚だったはずなのに」

 慌てふためくように言ったその言葉に、忠尚は蒼褪める。

 透子に盛られた惚れ薬は、彼女に忠尚を受け入れさせるため、彼を和尚だと錯覚させようとしていた。

「忠尚……忠尚よね?」

 戸惑いながら問う透子に、少しの間のあと、忠尚は投げやりに言った。

「……どっちでもいいよ」

 間近に目の前の人物の瞳を見た瞬間、透子は違う、と思った。

 確かに和尚に見えるのだが、あの、何処か人とは掛け離れた空気が消えている。

 だが、ぐらぐらする額の封印に、判断能力を奪われていた。

「本当は、俺だと認めて、お前に好きだと言って欲しかったよ。

 でも― 今言ってるこの言葉さえ、お前には、和尚の言葉に聞こえてるんだろう?」

 そう自嘲気味に嗤う。

 透子は忠尚を押し退けようとしたが、額が熱く、そこから力を抜き取られていくようだった。