冷たい舌

 


「お邪魔します、って、お前も明日、早いんだろ。
 すぐ帰るから。ほら、お前の好きな菊水」

 差し出されたビニール袋の中で光る金色の缶に、まあ、と透子は手を打った。

「天満さんがくれたんだけど、俺よりお前の方が好きかと思って」

 透子は冷酒が好きだ。

 それも高い安いではなく、自分の好みにあった奴だけが好きだ。

「嬉しい。わざわざ持ってきてくれたの?」

「いや、ちょっとこの間は悪かったかなって思って、お詫びに」

「そう、ありがとう」

 気を許した全開の笑顔を見せると、忠尚は何故か罰が悪そうな顔をした。

「それより、ちょっと呑んだらどうだ?」
「でも、今、祭りの最中だし」

「いいじゃないか。昔から『御神酒あがらぬ神はなし』っていうだろ?
 ひとつくらいなら、大丈夫だよ。ほら」

「そ、そかな」

 透子の手はつい差し出された缶を受け取っていた。

 禊がだいなしになった勢いもあったのかもしれない。

 透子がそれを飲むのを確認してから、忠尚は自分もひとつ取って開けた。