冷たい舌





 鳥居のところから和尚を見送ったあと、透子は、そうっと自分の部屋へと向かった。

 こんな田舎では何処の家も鍵をかけたりはしない。

 透子はみんなを起こすまいと、部屋の近くの縁側から入ろうとしていた。

 カラカラとサッシを開けていたとき、いきなり、ぽんっと肩を叩かれた。

「ひっ」

 悲鳴を上げそうになった透子の口を大きな手が塞ぐ。

「ばっ、ばかっ。俺だ! 俺っ」

 抑えた声に振り返ると、そっと忠尚の手が外れた。

「どうしたのよ、こんな時間に。あっ。あんた、清めてない手で私に触ったわね~っ!

 やだっ、もう~っ! 今、禊から帰ったばっかりなのにぃ」

 駄々を捏ねる透子に、忠尚は小声で訊いた。
「禊? 外でやったのか?」

「今日はちょっとね、色々あって。

 まあいいや。お祖父ちゃんには黙っとこ。
 どうせ、明日の朝もするんだし。入ったら?」

 透子は、ひょいっと縁側に腰をかけると、草履を脱いだ。

「お、お前んとこの禊って服着ないでやる奴だろ? 外でやんなよっ」