冷たい舌

 少し迷いながらも、白衣を脱ぎ捨てると淵に軽く足をつける。

 冷たい水が足の上を流れていった。

 透子は薄く微笑み、二本に揃えた指を高く掲げ、早九字の変形のようなものを切る。

 確かな手ごたえを感じて、ほくそ笑んだそのとき―

「透子!」

 後ろから声がして、ぎくりと振り返る。

 和尚は林の方を向いたままだった。

「お前、今、何かしたか?」
「いっ、いいえ。別に」

 つい、言葉が改まる。

「余計なことしてないで、早くしろ。風邪引くぞ」

 ちっ、鋭い奴だ。

 透子は、ゆっくりと水に身体を浸す。
 あんまり中程まで行くと、足が届かなくなりそうだ。

 腰まで水に浸かり、空を見上げた。
 真上に青白い月が、ぼんやりと浮いている。

 その光を浴びながら、透子は遠い昔の八坂祭りに想いを馳せていた。