冷たい舌

 

 
「ほんとなのよーっ。こう、べったり手に張りついててさー」

 白い袖をめくってみせる透子のその手をはたき落として、和尚は言った。

「誰も嘘だなんて言ってねえだろ? 此処は清めて結界張っておいたから、安心して禊をしろよ。

 俺が外に立っててやるから」

「えっ。それはやだ」
「てめえ……人の親切を」

 二人のやり取りに欠伸をしながら、公人は言った。

「どっちでもいいから、早くしろ。わしゃあ、明日早いんじゃ。
 透子。此処が厭なら、淵でやればいいじゃろうが」

「えっ。いやよっ。誰が見てるかわかんないじゃない」

「和尚を連れていけばよかろうがっ」
「それが厭だっつってんでしょっ」

「ちょっと待て、爺。淵は今……」
 和尚のその言葉に、二人が振り返る。

「なんじゃ、和尚。淵に問題があるのか?」
 いや、と和尚は口ごもる。

「そういや、お前。すぐに来なかったが、何処に行っとったんじゃ」

 龍造寺に公人が電話しても和尚は居なかったので、伝言を残して置いたのだ。