冷たい舌

 

 
「何処行ってたんだ、和尚」

 社務所に戻った途端、龍也が鋭い目で睨んできた。

 透子は既に柱を隔てた隣の売場で、仕事についている。

 龍也はちょっと顔を寄せ、小声で聞いてきた。

「おい。さっき、透子、髪結わえてたのに、なんで解いてるんだ」

「なんでって……俺の髪、括ってくれたから」

「それだけか?」

 窺うように上目使いに龍也が見る。

「それだけかって、なんだよ。あの短時間に何をどうしろっていうんだよ」

「わかんねえよ。お前、見た目より手が早いみたいだからな。

 まったく、あの忠尚を出し抜いてたとは恐れ入ったよ」

「出し抜くとかそういう器用な真似が俺にできると思ってんのか」

「じゃあなんだよ。

 ああ、そうか。自分がどうとかいうんじゃなくて、透子がお前を好きだって、言いたいわけね?」

「いちいち引っかかるなよ」

 小声で小競り合いを続ける二人を、いつの間にか後ろに来ていた公人が呆れたように見ていた。

「真面目にやらんか、バイト代ださんぞ」

 なんだよ、と龍也は舌打ちする。
「いつもスズメの涙じゃねえかよ」

 和尚は、ちらと柱越しに透子を気づかう。