冷たい舌

「お前、自分のは苦手なのに、人のは出来るんだな」

「だって、人のなら見えるじゃない」

 なるほど、と変に納得したとき、手を放した透子が微笑ましげに自分を見ているのに気がついた。

 つい照れて、つっけんどんに訊いてしまう。

「なんだよ」

「いや……こうしてると、なんだかあの幻の和尚みたいね」

 透子は笑ってはいたが、何処か変だった。

 思わずそのきゃしゃな肩に手を伸ばしかけたとき、透子は極自然に身を引き、手を打った。

「ねえ、社務所、お昼からバイトの人と交代したら、縁日見に行かない?」

「お前、そんな暇あるのか? 神楽の打合せも残ってるだろ。また爺にどやされるぞ」

「いいじゃん。りんご飴買ってよ」

「りんご飴?」

「あれ、私食べたことないんだ。お母さんがあんな変な色のもの食べちゃいけませんって言うから」

「同感だ。それに、別にうまくはないぞ」

 ちょっと食べてみたいのよ、とその手の食べ物のことには、さほど執着のない透子にしては珍しく、強引に和尚の手を引いた。