冷たい舌

 

 
 公人の祝詞が始まり、側に控えていた透子は、同じく控えていた和尚に小声で訊く。

「ちょっと。なんで普段着なの?」

「……俺はおまけだからだ」

 まだ不機嫌だったが、ちゃんと言葉は返してくれた。

 和尚の袖を摘んで言う。

「あんた、神職の資格持ってたのね」

 浅葱の袴ということは、見習いではない。

 見習いなら白い袴のはずだ。

「うっせーな」
と手を払う。

 通信で取ったにしても、講習は受けに行かなければならなかったはずだ。

 年がら年中べったり一緒だったはずなのに、一体いつ―

「あっ、わかった。大学のとき、あんた珍しくきーちゃんたちと旅行に行って来いなんて言うと思ったらっ」

「うるせえ、黙れよっ」

 お前等二人とも黙れ、と公人に叱られ、慌てて二人は大きくなってしまった声を抑え、そっぽを向く。