冷たい舌

「そうですか? これ、一番新しいやつなんですよ。
 まだ、あんまり着てないから」

 透子が嬉しそうに笑うと、斉上も嬉しそうだった。

 それは和尚や忠尚たちと居るときに見せる表情とは、少し違っていた。

 いつもの頼れる先輩じゃなくて、なんだか普通の男の子みたいだと思った。

 この年で、そんなこと言うのも変だけど。

 ちょうど視界に入ったカップルの男の方が、灰皿を頼むのを見て、気がついた。

「斉上さん、煙草吸わないんですか?」

 斉上は、はははと笑って軽く言った。

「だって、透子ちゃん、嫌いなんだろ―?」