冷たい舌

「あ、今、ムカついた? そう、和尚、かなりモテてたよ」

「別にムカついてなんか」

 無理にチャイを飲み込もうとして、熱さにむせた。

 慌てて置いた陶器のカップの中身が跳ねて、白い受け皿に茶色い液体が散る。

「大丈夫?」

 斉上がハンカチを向けてくれるのを手で断って、バックを開けながら、あ、きちんとアイロンかかってる、しかも、趣味のいいブランド物とか思っていた。

 咳き込みながらも、つい、そういう細かいとこまで観察してしまうのは、女の性(さが)なのか。

 薄いレースのハンカチで口許を押さえて息をついた透子は、斉上がちょっと寂しそうな目で自分を見ているのに気がついた。

「……やっぱり、両想いなわけ?」

「え?」

「和尚と君―」

 透子は手を下ろして斉上を見た。

「高校のときさ、その、ちょっと用事があって、君を誘おうと……思ったんだ」

 透子は斉上が赤くなるのを初めて見た。

「でも、和尚にばれて、ひどい目に合わされたけど」

「ひどい目って― どんな目ですか」

 顔を上げた斉上は苦笑いしたまま、呟いた。

「……いろんな目だよ」

 それぎりその話題には触れたくないようだった。