冷たい舌

 ディーラーで初めて、本物のクアトロバルボーレを見たときのあの感動は忘れられない。

「もう、ほんと価格は家ほどするし、維持費もかかるし。

 でも、私、これを買ったとき、お金で手に入る全てのものは手に入れたって思ったんですよ」

 へえ、と斉上は頬杖をつき、にやにや笑っている。

「お金で手に入るものはね。入らないものはどうしたのかな?」

 透子は咳払いする。

 さすがは斉上。
 鋭い―

「そういえば、この間、和尚をコンパに連れていったけど」

 ああ、と透子は眉をひそめる。

「最悪だったね。あんな男、連れてっちゃ駄目だってよくわかったよ」

「場の雰囲気にそぐわなかったでしょ?」

 同情気味に言うと、そうじゃない、そうじゃないと斉上は手を振った。

「女って結局、太鼓持ちより、黙ってて何考えてんのか、わかんない男が好きなのよ」

「……そうですかねえ」

 答えながら、むっとする。

 それを斉上に見て取られた。