冷たい舌

 

 
 次の日の昼、公人は龍也を使って、境内で山車の仕上げをしていた。

 軒下に出た透子は、白いTシャツにジーンズという軽装で、額に汗して働く弟の姿を物珍しげに見遣る。

 暑さと面倒臭さに癇癪を起こしたように龍也が叫んだ。

「おい、ジジイっ!
 こんなの氏子さんたちが来てから一緒にやればいいだろ!」

「ちょっとくらいやっておいたほうが、ああ、青龍神社さん、やる気があるんじゃな、と思うじゃろうが。

 最初から、人に頼りきりなところを見せてはいかん」

 なに言っとんじゃ、こいつら。

 通りかかった透子に気づき、公人は長い棒のようなものを手に持ったまま言った。

「こりゃ、透子。ちょっと手伝え」

「やあよ。力仕事なんて足手まといになるだけだもの。
 私、それ一本、抱えられないんだから」

 真実だった。

 公人は舌打ちして言う。

「ほんに役に立たんのう、お前は。飾り付けくらいは出来るじゃろうが」

「じいちゃん、そこまで、まだいってねえって。
 ったく、毎年分解すんなよな」

「仕方ないじゃろう。置き場がないんじゃから」

 龍也は透子と一緒に作業したくないようだった。

 全く、困った弟だこと……。