冷たい舌

 すぐに行動を起こそうとした天満の横で、忠尚が呟いた。

「俺はただ、透子に好きだって言って欲しいだけなんだ。

 あの目で、真っ直ぐに俺を見つめて……愛してるって……っ」

 忠尚は言葉を詰まらせた。

 それは天満の動きをも止めさせる。

 忠尚の言葉に嘘はない。

 自分だってそうだった。

 一度でいいから、薫子に自分を好きだと言って欲しかった。

 それだけだったんだ―

 言い訳がましくそう思う。

 だが、天満は今でも疑問に思っていた。

 あの薫子に本当にあんな薬なんかが効いたのだろうか。

 もしかしたら、あれは薬のせいじゃなかったんじゃないだろうか。

 だけど、そう思うたび、いつも胸をよぎるのは薫子の最期の光景だった。

 薫子が最後に手を取ったのは、自分ではなく、公人だった。

 長年連れ添った夫だった。

 あのときの僕の気持ちが、貴女にわかりますか、薫子さんっ!