冷たい舌

「そうは言っても、維持費もかかるだろうが、あの車は。ちゃんと無駄遣いしないで、取っておかないと」

 大河とともに、潤子も娘の提案を即座に却下する。

「そうよ。いらないわよ、そんなもの。

 そんなことより、それ持参金にして、さっさと嫁に行っちゃってちょうだい」

「どうしてそんなに私を追い出したいのよ」

 そういうわけじゃないけど? と潤子は肩を竦めて言った。

「放っといたら、あんた行かず後家の巫女さんで終わっちゃいそうなんだもん。

 そんな小姑がいる家に誰もお嫁になんか来てくれないわ。龍也が可哀想」

 ひどい言い草だ。そう思ったとき、開け放たれた縁側の方から声がした。

 黒いリュックを手にした龍也が立っていた。

「俺は此処継がねえって言ってるだろ?
 小姑が居ようと居まいと関係ねえよ」

 透子によく似た繊細な美貌を持つ弟は、偉そうな態度で入ってくると、ソファにリュックを投げた。

 別にどっちが継いでくれてもいいわよ、と潤子は溜息を漏らす。

「二人とも結婚してくれればね。

 透子は龍神様、龍神様。あんたは、バンド、バンドって、二人とも地に足がついてないんだから」

「ちょっとお母さん。
 私の龍神様と、龍也のバンド一緒にしないでよ。

 だいたい私、一回見に行ったけど、こいつのバンドなんて、メンバーの顔だけで持ってるようなもん― いてっ」

 後ろから肘でどつかれた。