冷たい舌

 忠尚はたいして吸いもしないうちに、せっかくやった煙草を銀色の灰皿に押しつける。

 突き立ったそれが、ゆっくりと倒れていくのをぼんやりと見ているようだった。

「なんだよ、元気ないな」

「あんたも今日はないよ」

 天満は台に頬杖をついて、まだ煙草をふかしていた。

 透子に会ってから、自分でも整理しきれないものが頭の中を逆巻いていて、なんだか落ち着かなかった。

 透子ちゃんは、何故、今も後生大事にあんな封印を守っているんだろう。

 忠尚が黙っているのをいいことに、天満は考えごとをしながら、すぐ目の前の白い壁を見ていた。

 こうしていると、まるで、この世界は三十センチくらいしかないような変な気分になる。

 後ろで忠尚が、ぼそりと言った。

「ねえ、天満さん。惚れ薬ってないかなあ」

「あるけど?」

「そうだよねえ」

 二人は暫く黙って違う方向を向いて、ぼんやりしていた。

 そして、あるとき、はたと、お互いの発した言葉の意味を理解して向き直る。

 天満はすぐに自分の失言に気づいて、誤魔化そうとしたが、遅かった。