冷たい舌

 白と黒のマグカップを持って部屋から下りてきた忠尚が目ざとくそれを見つける。

「あ、それ。俺にも」

「きついよ、これ。
 体調崩すこと請合い」

「じゃあ、なんで吸ってんの」
「だから吸ってんの」

 それを聞いた忠尚は肩をすくめて、天満の前にカップを置いた。

「なに? 天満さんでも、やなことあるの?」

 やなことっていうかさ、と忠尚に一本やってから、自分も口に咥える。

 忠尚が緑の百円ライターを出してきた。

「……マッチがいい」

「あんたも、大概、我儘なオヤジだな」

 溜息つきながら立ち上がった忠尚は、ちゃんと何処からかマッチを捜して持ってきた。

「なんか味が違う気がするんだよ」

「そういう人多いけど、俺は気のせいだと思うけどね」

「そういう味覚の奴が、人んちの珈琲にインスタントだなんだって、ケチつけないでくれる?」

 だが、忠尚は話を聞いていない。

 棚の上に並ぶガラス瓶を見ながら訊いてくる。

「なにこの、焦げたヤモリみたいなの」

「……焦げたヤモリだよ」

「これ飲むの?」

「飲みたかったら飲んでもいいよ」